『ヴァージン』

先日『ヴァージン』というオムニバス映画を観て来た。
女性の処女喪失をそれぞれの年代に分けて描くという試み。

10代篇「くちばっか」監督・脚本:今泉力哉
20代篇「ゴージャス・プリンセス!」監督:福島拓哉 脚本:井川広太郎 
30代篇「ふかくこの性を愛すべし」監督・脚本:吉田光希 脚本:斎藤香織 


の三編各40分の上映である。


10代篇「くちばっか」監督・脚本:今泉力哉
はぺったりとした会話の中にくすぐったい人との対話の感触が楽しい映画だった。
しかし、東日本大震災の出来事を絡めたり、時間の軸がちらちら変わったり、
お客さんを引っ張ろうとしている仕組みが、このぺったりとした良さと喧嘩してしまっていて、
退屈を招いていたと思う。
今泉さんならではの人選は素晴らしく、登場人物のみんなが可愛らしい。


20代篇「ゴージャス・プリンセス!」監督:福島拓哉 脚本:井川広太郎 
はあんまり処女喪失と関係ないような…。それでもストレートなドラマが力強く、
ラストシーンのベタさには普通ならおいおいとなっちゃうんだけど、感動してしまったぞ。
音楽のタイミングとか強弱が器用になっていたら、もっと波に乗れたと思う。


30代篇「ふかくこの性を愛すべし」監督・脚本:吉田光希 脚本:斎藤香織
1カット1カットがシンプルに力強く、それらが淡々と繋がっていく度に感情が静かに乗り移ってくる。
やはり出演者の脚本への理解力が芯になっているんだと思うんだけど、小道具とか衣裳などの
ディテールへのこだわりもさりげなく、僕らを映画の中への興味を持たせるようになっている。
こんな細々としたことはどうでもよくて、ラストシーンまで食らいついて観てしまったよ。
隣の見ず知らずの若い女性客は主人公の咆哮に併せて号泣していた。



映画ってやはり興味を引くのも肝心なのだなぁ。と。
ただあの総合エンドロールのエンディング曲はどうにかならんのかな。
個人的にすごく、ださい。と思うし、30代篇の余韻が台無しである。ふん!