カツモクエイガ2作品かいせつ2 「イートスリープクリープ」

2日目解説はMayFlyNo.002 「イートスリープクリープ」です。

夜ノ部のみ公開(2006年〜2007年制作)

予告篇
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=1545582

あらすじ

けんいちとまど子という男女がいる。2人の間に出来た子供が出産できなかったことが2人の心を
苦しめていたが、それぞれ仕事をみつけ、どうにか安定しそうだ。
ところがある日を境にけんいちは眠れなくなり、まど子は食べることができなくなる。

けんいちとまど子は思いついた。

食べれないなら
食べなければいい。
眠れないなら
眠らないで過ごそうと・・・。


制作期間が長い。
きっかけは2005年主演の熊谷まどかさん(以下まどさん)が監督した短編映画「はっこう」(後にPFF2006アワードグランプリ受賞)の
完成プレビューを観させていただく機会があり、その会場へ向かう京都行きのバスの中で上記画像の画がぼんやり浮かんで
メモしたのを覚えている。


その夜、まどさんらとお酒を呑んでいるときにまどさんが「わたしは女優もしたい!」と仰っていたので
「じゃあ出て下さい」と依頼して、ふと相手役はPFFで出会った監督・役者の小林でびさんがいいのでは。
と思ったのだ。その場にいた映画監督の岡太地くん(やはりPFFで知り合った)も役者参加決定し。
早速シナリオ書き→第一稿を小林でびさんに読んでいただき、オファーを許諾していただいた。
そこからはやはりPFFで知り合った方々をぐるぐる巻き込み始めた。


音声の石川真吾くん、特別出演の渋谷のり子さん、はPFF入選監督さん。
主人公の先輩にあたる西村役には、やはりPFF2006で知り合った俳優、服部竜三郎さん。


メンバーがさくさく決まるのはいいが、殆ど東京在住の方ばかり。
しかし強行されました。1年間のシナリオ改稿を経て、徳島県ロケ。5日間の合宿撮影。
現在は妻になっていただいた、未来の妻も参加。
妻の祖父、故・祖母がロケ場所と合宿場所を快く提供していただいた。感謝である。


徳島の友人たちも参加し、なんと南は九州から「おわりはおわり」を観て参加を決定して下さった「くすちー」まで。
始めてのスタッフワークで戸惑いもありながら、春とは思えない熱の中撮影を進め、余裕を残しつつ撮影は完了。


幾つか怒声も交わったが、撮影に入るときりっとしていくスタッフ陣。
印象的だったのは、クライマックスシーンの撮影場所がどうにも使えない状況になった時である。
音声、役者が周囲を探索し、元々のロケ地より「合った」場所を探し出して下さった。
「こういう場所ならカメラワークを滑らかなドリー撮影にしたいなあ」という有りもしない機材を要する発言をしたら、
すかさず撮影車輛にカメラを取り付けて、即席ドリー撮影機を作製してしまった。


お休みにも関わらずお店丸ごと提供していただいた「こはくの天使」さん。
東京役者陣に物怖じせずに見事演じ切った、伊原美恵さん、福島あゆ美さん。(両名:おめでたい意味で旧姓です)
顔見知りもいないのに参加して、協力していただいた中島さん、西川くん、鴨川くん。
徳島のスタッフ陣も堂々としたものだった。
1人では脳内のことを思い描くことなど具体化できない。それを痛感し感謝し、グラグラになってしまい、
撮影後も寝言で撮影していた。


完成は2007年。音声の石川君宅で3日間の音声調整(MA)を経てようやく仕上がった。
しかしどのコンペにも入選せず。今迄日の目を浴びなかったのだ・・・。


ダメだったのか。この作品・・・。とも思わずにいられなかったが、
その後製作に取りかかった「ネコハコベフジワラさん」を上映して下さった映画館の支配人さんに作品を
観て頂くきっかけがあった。作品を見終えた支配人さんが電話口で「是非、やりましょう」
と言って頂いた時はグラグラになっていたあの気分が泡になっていくような快感を得た。
それまで続けてきた「次へ繋げよう」という意気込みがさらに意味を変えていくきっかけにもなった。


と長々と製作ばなしになってしまった。


それ位印象的な出来事が多い作品だったので「おわりはおわり」と並んで、
未だに冷静には見返せない作品でもある。
ぎゅうぎゅう締め付けるおはなしだと思う。
その締め付けからそっぽを向くことも、やけくそになることもできない2人が
解けていきながら、結ばれていく様は心地いい。
今でもまど子とけんいちは、仲良くけんかしているんではなかろうか?