マジックアワー

ずっと前に観ました「マジックアワー」

全編2時間15分。気分的には長さを感じない。やっぱり中盤の怒濤畳み掛け笑いが効いている。僕はもうこれだけで「帰ってきた三谷幸喜!」と嬉しいのだけど、複雑なもんである。「王様のレストラン」で大爆笑した要素はあるものの、そこにあった感動の要素は無かった。「そんな前のこと繰り返してどうすんの」って人もいるだろう。けれど、今でも観て笑って泣ける最高峰のドラマだと思えるものであるし、その骨は大事に育てて欲しい。

決定的に違うのは1話完結のドラマが毎週繰り返されて、そのテンションを積み重ねることができないのである。2時間15分の尺では。そこで、合間合間になんだか無理矢理な感動が押し込まれていて、深みが感じられない。
どうしてそんなテンポで長く感じないか?というと随所に散りばめられたオマージュや、目を引くキャスティング。がツボなんだと思う。それが嫌なんじゃなくて、それがどこにも結実してないのが歯がゆいんですよ。

しつこく引用しますが、「王様のレストラン」では映像という舞台では明るみに出ていなかった舞台役者たちを主軸に置くことで絶妙な掛け合いを引き出して群像劇として映像に結実していたのだ。別に著名な役者をバカにしているわけではないのだけど、例えば西田敏行がポンと出て来ると絶対「おいしい役なんだろうなあ」と予測してしまえるのだ。なんだか癖のある人がフッと輝く瞬間を描いてこそのいい脚本だっただけにキャスティングの別の意味での英断をして欲しかったりもするのだ。近藤芳正氏、梶原善氏、などはおなじみでチョロっと出てますが、やはりチョロ味しか引き出されていない。

少し寂しくなったので「12人の優しい日本人」のビデオを引き出してきて、見返してしまった。ああ、いい映画だなあと思い、この役者さんたちはどうしているのだろう?と調べてみると2人亡くなられていた。どちらも個性豊かだけを売りにするというよりも飄々とした役をきちんと演じていて好感が持てる方だったので、すごく悲しくなった。

加藤善博さんという方です。色々調べると「家族ゲーム」に出ていたのですね。主人公の担任教師役で初見時「うわー、いるわ。こういう先生。いそうやわー」というインパクト大でした。公園で首を吊っての自死とのこと。情報過多のこの世界。こんなインパクトを与えた人の死もぐむむと埋もれていくのは、とても悲しいです。なんたらの10周年だとか、そんなのは続いてるのだからいいじゃないか。もうちょっと果てのことを噛みしませておくれよ。そうでなきゃ、果てまでがんばった人たちが哀しすぎるわ。

長く、無関係な方向に進みました。ごめんなさい。

ただこういう不安とか不満とかをすっきり解消させるエンターテイメントを作れるひとたちの1人なのだな。と思いました。三谷幸喜さんは。だから次もがんばれ。や、偉そうだな。がんばってください、楽しみにしています!映画でなくてもいいですよ。むしろドラマをなんとかして下さい!