めずらしく長い感想 2本

ジャッキー・ブラウン [DVD]

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しわが渋い映画だぜ。「うわあ、きっとあるんだろうなあ」と思う瞬間がえぐい映画だった。タランティーノ監督作品はこういう風合いの方がカッコイイんだけどなあ。

アヒルと鴨のコインロッカー [DVD]

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原作者の伊坂幸太郎の文章は軽妙で、展開もどきどきするものなので、キャッチーに思われがちだけど、その殆どの作品のベースには重く冷たい、どうしようもないしんどさが存在していて、本作はそれがかなり自分にとってヘヴィで痛かった作品だった。
映画もその感覚を損なわないように、映像にしてしまうともっさりしてしまう部分は潔く切り捨てて、映像にしてしまえる心地良さは絞り出す巧い演出が施されている。主人公の椎名以外の人物はどこか現実的じゃない(言い方を変えれば「あんまり身の回りにはいない」)人たちなので、徹底的に椎名の人物造形を観る側「ぼくら」「わたしら」に近づけるように演じた役者さんは素晴らしい。友達になりたいんだよ、椎名と。


(以下ネタバレにならない程度に書くけれども、ネタバレかもしれません)




何よりも原作で「彼女」が目を閉じる時の心情は文章で読めるのだけれど、どうしてもその表情が心配になってしまった。映画ではきちんとその表情を切りとっていて、「彼女がそういう風に目を閉じたなら、それで丸くなる」と珍しく胸がいっぱいになってしまった。けれどもその表情を知るのは、「ぼくら」「わたしら」だけであって、この映画の世界の誰もが知ることもなく、生きていかなくてはいけないのだ。と思うと号泣してしまった。