手を振る

 またまた、地方情報誌のインタビュー。結構話せる人で、面白かった。

 帰宅中、バス停に降り立つと、側のマンションの入り口で三歳くらいの子供が僕に「バイバイ」をしていた。「バイバイ」と返すと。嬉しそうに「バイバイ」してくれた。

 バイバイとはいいもんだ。去年の今日という日、僕はYを海へ連れて行って、帰る途中でキスをした。そのままYの部屋で泊まって、朝にキムチチャーハンを一緒に作って、食べた。エッチなことはさせてくれなかったので、眠れなかった僕はボヤーッとチャーハンを食べて、チャーハンを食べながら牛乳を飲む彼女に驚いた。おっぱいが大きくなるそうだ。「触らしてくれないのに、大きくしてもな」とチャーハンを食べる終えると、Yは大学へと行った。そのまま部屋で昼まで寝て、起きるとチャーハンの残りを食べ、部屋にあった「マスク・オブ・ゾロ」のビデオを見た。

 見終わってプレステ2をやってみようとするが、電源の付け方がわからない。お皿とスプーンを洗っていると、泣いてしまった。

 夕方Yが帰ってきて、キムチ鍋をした。ウインナーを入れるのに驚いた。

 今度は僕が帰る時間だ。Yは「バイバイ」とキスをして、ドアが閉まるまで、手を振ってくれた。笑っていた。

 それから別れるときはずっとそれだった。ちょっとはにかんで「バイバイ」という姿にはバイバイしたくなくなる。ケンカした時も、妊娠のことを打ち明けたときも、最後の最後までそうだった。

 マンションを振り返ってみると、まだ子供は僕を見ているようだ。「バイバイ」としてみると、力強く何度も「バイバイ」をしていた。このまま見えなくなることを知らないんじゃないかと思うくらい、ずっと。

手を振る あなたの顔だけ 見えないよ 笑っているならいいのにな