旅のとき

 キセルのニューアルバム「旅」を聴いた。音色(触)は以前の「窓に地球」に比べると、生っぽく、耳元でやさしく漂う方向に向っているが、相変わらずのフィルターを通した独特世界はやはり気持ちいい。

 全編通して「花」ということばがよく出てくる。ファーストアルバムから今までは「さよなら」が多かったが、今回はあくまで進む先々での「花」が主役なんだろう。

行く道は何処までも 行ける気がした
つかめないゴムまりを 投げ合いながら
春を吸い込んでは 膨らむ僕ら
まっさらな空から 聞こえ出すのは
(収録曲『タワー』より)

 そしていつもは収縮していくような空気だったのが、確実に膨らんでいる。孤高でありながらその景色は果てしなく広い。