帯ギュ

 「帯をギュッとね!」(作 河合克敏)という漫画がある。帯は柔道の帯。粉川巧という主人公を筆頭にたった5人と2人の女子マネージャー部員で浜名湖高校柔道部を創設。顧問の天然系美女教師(剣道三段)と共に全国一位を目指す・・と、この辺でコメディーっぽさたっぷりなんだが、どっこいこれが僕の大好きな「成長系」なんだな。(もちろんギャグ満載ではあるが)

 あざとくない柔道解説(それでいてわかりやすい!)現在日本柔道界が抱える問題などを面白おかしく散りばめながら、あくまで「強くなることを楽しむ」ということを念頭に奮闘する浜名湖柔道部員を描いていく。さして目立った特徴のない絵柄だが、地味ながらも計算されたコマ割りはまさに「一本技」だ。

 何よりも「柔道」を追求する者に対する視線の暖かさが心地良い。主人公らに後半コーチとしてつくのは現役警察官でそこそこ柔道のウマい西久保さん(といっても元国体選手で、主人公らよりは数倍強い)だったり、弱小ながらもビデオ撮影で偵察をくまなくしてデータ戦術を立てていく高校生など、その追求方法の
許容量の柔軟さは作品の裾野を広げることに一役買っている。

 しかし、その一方でやはり「最強」の名を持つのは才能を持ち且つ努力を重ねて来た強豪、千駄谷学園。浜名湖高校は彼らに勝つために相手の虚をつく技「裏技」の開発に励む。ドラゴンボールなどの往年の格闘漫画なら決め技は「かめはめ波」などに終始するが、彼らは各々のもう一つの得意技を駆使していくのだ。頭の固い柔道家なら「単なる奇襲」と一笑するんだろうが、すでに本編でその言葉に対する反論を作者は用意している。「体重ばかり増やして、ポイントばかり狙う柔道など『柔』の道ではない」しかもこの台詞、千駄谷学園のコーチが言い切るのだ。そうライバルも「型」から抜け出そうとしたもうひとつの浜名湖高校なのだ。こんな両者の激闘に興奮しない方がおかしい。そしてあくまで団体戦優勝にこだわる浜名湖高校。ここにも作者の「ワンマンで成立するスポーツなど一つも無い」という姿勢がはっきり見れる。そして心地良い。(これは次回作「モンキーターン」でも見られる)

 作者は最終回の締めくくりの言葉に、「名もなき柔道指導家」が日本柔道を支えていることを忘れないで欲しいと記してある。そして帯ギュ終了を見られずに亡くなった作者の父こそがその柔道家だったのだ!くぅー!!こういうの弱いんです!!

 ちらりと女子柔道をテレビで見て、このコにもそういう人がいるんだなあ。と思いどっちも頑張れ!と思ってしまった。スポーツ嫌いの僕が。

 しかし、作品を見てもらえば分かるが、美人マネージャー(主人公の彼女!)といい、出て来る女子柔道部員といい・・・ちょっとカワイすぎるぞ!あれに憧れて柔道部に入るコがかわいそうだ。いや、ザマーミロ!!(やっぱスポーツ向いてないな)