ボス

 ベンズさんが店長にならないかと誘われた。そして僕は店長代理。ベンズさんは僕が補佐するならやるし、やらないならバイトを辞めたいと言っている。

 まず、就職という面ではなかなか無い話だろう。しかし僕には映画がある。ベンズさんには音楽があるだろう。

 タイミングの悪いことに今、次回作短編と長編を同時に頭に浮かべてしまっているのだ。長編の方はまさにこの「タイミング」の悪さにかき回されてしまった人のお話でもある。

 マンガ喫茶というのは嫌いではないが、人間があんまり好きではない。特に自分が働いている店に来る大多数を占める人種は嫌いだ。差別ではない。嫌いなだけだ。拒否したいだけ。まずこれが迷っている理由になる。

 もうひとつ複雑な、というか勝手な理由もある。Yが妊娠したとき、Yが決断していたこともあるのだが、僕は「フリーター」の道を選ぶために同意書にサインをした。そのころ働いていたところでも社員の話は来ていたが映画撮影を理由に断ったのだ。
 店長代理ともなれば給料も多少はアップする。が、やはり余裕のある時間は空けれないだろう。それでも合間を縫って作ればいいのだが、それではどちらかがおろそかになってしまう。Yを痛い目に合わせてまで選んだ映画作りをこうも簡単に諦めていいのだろうか?就職するならあの時「産んでくれ」と言えたんだろう。卑怯者だから。そんな風にまた思考の迷路に入ってまうのだ。

 25歳になったら「ちゃんと仕事する」と公言している僕だが、本心はちょっと違う。僕が25歳になってもこんな自分勝手な思考を持て余しているなら消えた方がええだろう。などと考えてしまうのだ。それこそ自分勝手なんだろう。だからそれを打破するために色んなことしてるのだ。

 こんなむこうみずでボス代理できるかね。まだ結論でません。