ニートルズ

 ニート。我々のような年代層で就業意欲のない者をこう呼ぶらしい。就職をしてないことには何らかの後ろめたさはあるが、家にはお金を入れているし、映画作りにおいて、他人から譲り受けた資金を用いたことはない。就業意欲の無いことがいけないのだろうか。

 今日も深夜(朝か)バイトしていたら、僕より2歳程下の男二人、レジ前で話をしていた。一人は大人し目の男、一人はやかましい女を連れてありえない徳島ファッション性を見るものに押し付けてくるタイプ。二人は久しぶりに再会したらしく、近況について話していた。おとなしくんは、どうやら仕事が忙しくて、ようやく休めて漫画喫茶で一人くつろぎに来たらしい。ありえないくんはそこに「ナンパしようぜ」などとツッコミを入れ、仕事に関しては、今日は寝坊したからそのまま勤め先に電話して「熱がある」と言って休んで一日中、やかましい女と遊んでいることを自慢気に話していた。なぜか「ナンパなんかしたらいかんよ」と意見を変え、「ねえ」と僕に同意を求めて、「ぎゃははは」と笑い出すところを見れば、まあ当人はそれでいいと思っているのだろう。

 やる気がないと自分で感じる内はまだいい。やる気がないのに気付いていない事の方が厄介だ。就業したって、そこに「意欲」とか「上昇志向」が存在しない。または自分のそういった感覚が削がれていくような職場だったら、僕はごめんだ。

 「はあそうですねえ」まともに答える気が無いのを精一杯意識しながらも、この場合は無いままの方がいいかと、入り口から見える深夜の闇だけを望んでいた。