パンジー

 朝八時。バイト終わって車で帰宅途中、家の前の狭い道で事故に遭った。

 狭い路地をゆっくり走っていたら、右側の家から軽トラがもの凄い勢いで飛び出して来た。しかもバックで。ブレーキと共に慌ててハンドルを左に切る・・って左は川やがな!

 軽トラは僕の車の右前方にめり込むまで止まらなかった。

 降りて見てみると、タイヤを覆っているサイド部分が目に見えて凹んでいる。しかし運転は出来そうだ。

 軽トラの運転手は近所のおばちゃんで、僕は顔を知らないが、おばちゃんは知っているらしくしきりに「ごめんなあ」「警察呼ぶ?」「おばちゃん、パンジー取りに慌ててなあ!」とパニくっている。

 年内に車買い替えるわけだし、相手の軽トラも傷はないし、修理だ、警察だとしていたら日が暮れちまうよなあ。と乱れ飛ぶ「パンジー」の言葉の間に僕は考えて、その場で父親に助言を電話で求めた。「近所で、怪我なし、車も動くなら、そのままにしとけ」とのこと。「んじゃ、まあ。運転に具合悪かったら、修理するんで。その時また費用出して下さいよ。多分、大丈夫ですよ。買い替えるんでね」とおばちゃんを帰す。

 帰宅後、映画編集をしていたら、玄関で母がそのおばちゃんと何やら話をしている。どうやら手みやげを持って来て詫びているみたいだ。やはりまだ「パンジー」と言っている。しばらくして、母が僕におばちゃんからもらった封筒を渡す。分厚い。
え?まさか!これっすか!っていうぐらいお金が入ってた。顔は変わらずとも偽造しにくくリニューアルされた彼がたくさん入っていた!

う〜ん。パンジーか・・・。交通事故には様々な理由があり、被害者、加害者に思わぬ結果をもたらす。