オードリー

 何故か以前のバイト先である映画館の営業だけ続けている。で、今日はその営業に行っていた。営業といっても決まったお店にポスターと招待券を配るだけの仕事。とはいえ、朝から晩まで車で行ったり来たりつらいものだ。
 
 この映画館には以前付き合っていたYがバイトしている。で、同じバイトをしている女子たちも僕らが決別したことは知っているのだろう。色んな女子が優しく話しかけてくれる。時給は安いが、こういうスタッフ間のやさしさは素晴らしいところだ。

 しかし、僕にはそれが逆につらいのだ。その優しさはYだけに向けておいて欲しい。

 悲しくて身動きとれなかった僕が家に帰ったときテレビでオードリー・ヘップバーンが笑っていた。きれいだったけど、笑顔は毒。何百万人がオードリーに毒殺されたのと同じ様に、僕も色んな人の笑顔に殺されかけた。